男性育休アンバサダー座談会_2022

株式会社リクルート 男性育休アンバサダー 石田さん、永石さん、川島さん(撮影:八木虎造)

株式会社リクルート 男性育休アンバサダー 石田さん、永石さん、川島さん(撮影:八木虎造)

仕事の経験が育児に、育児の経験が仕事に活きる。育休で得た新たな視点

このたび、株式会社リクルートでは男性従業員の育児参加促進を目指した取り組みとして「男性育休アンバサダー」プロジェクトが発足しました。今回は、第1期アンバサダーの中から3名が集い、座談会を実施。育児の魅力やキャリアとの葛藤、そして育休を通じて得た気付きなど、経験者だからこそ語れるエピソード満載の座談会となりました。

仕事の視点を育児に活かせると知り、育児がもっと楽しくなった

―はじめに、皆さんがアンバサダーに応募したきっかけを教えてください。

石田さん(以下、敬称略):自分の経験が何かのヒントになればと思い参加しました。実際に育児を経験してみると、育休前に想定していたものとは全く違っていて最初は戸惑いました。でも途中から、いつも仕事でやっている「プロジェクトを動かす」という観点で育児を捉えてみたら、苦手意識が楽しみに変わったタイミングがあったんです。そうやって視点を変えたり、今までの頑張りや経験を活かせると知ることで、もっと男性も育児を楽しめるのではないかと思っています。

永石さん(以下、敬称略):僕はマネージャーとして採用に関わる中で、どうしたら良い人材が入ってきてくれるかなと考えていて。子どもがいて、時間的に仕事にフルコミットできない人の中にも、きっと優秀な人材はいっぱいいると思います。そういう人たちに、「リクルートには仕事で成果を上げながら、育児も頑張っている人たちがいるんだ」と伝えて興味を持ってもらうことで、良い仲間が増えてくれたらいいなと考えています。

川島さん(以下、敬称略):僕は子どもが二人いるのですが、一人目の時に育休を取らなかったことをすごく後悔したんです。妻が大変な思いをしている一方で自分が力になれていなかったり、日に日に成長する子どもの変化に気付けなかったり…。そこで二人目の時は必ず育休を取ろうと決意しました。実際に育休を取得してみたら、子どものかわいさも妻の大変さも、より強く感じましたね。そういった経験を、同じように悩んでいる人たちに伝えていきたいです。

長期的な視点で人生を捉えた時、仕事と家庭にどうリソースを割くか

―育休を取得する際、苦労したことはありますか?

永石:自分が育休を取得した2015年当時は育休取得の前例がなかったので、本当にこの選択は正しいのだろうかと悩みました。僕自身も社会人として自信をつけたい時期でしたし、キャリアにブランクができることにも抵抗感はありましたね。ただ、もともと育休を取りたいという思いは強くあって。北欧出身の同僚が仕事にも家庭にもプライドを持って生きている姿を見て、「自分も子どもができたら彼みたいになりたい」と憧れていました。それと、ちょうど育休について悩んでいた頃、男性育休に関するイベントに参加してみたんです。実際に育休を取得した男性たちの経験談をたくさん聞けたことで「やっぱり自分の選択は間違っていない」と勇気づけられ、育休取得を決意できました。

川島:僕も以前はキャリアへのこだわりが強かったです。でも一人目の時に育休取得しなかったことを後悔してからは、自分のライフスタイルを見つめ直したいと思うようになりました。そんな時に、育休のイベントに参加したんです。そこで先輩方から良い話を聞けて、やっぱり二人目の時は会社を辞めてでも絶対に取るぞと(笑)。僕がいる部署は誰かが休んでもすぐに代理を立てられるような組織体制なので、実際の取得に関しては動きやすかったと思います。

石田:僕は当時、大規模なプロジェクトのリーダーを務めていたのですが、まずは自分が休むことに対する考え方を変えようと思いました。「自分が仕事をする」ことではなく「チームとして成果を出す」ことが求められているのであれば、僕がいなくても他の人が成果を出せる状態になればいいのではないかと。そこから自分が休んでも仕事が回る状況を計画的に作っていきました。精神面でいうと、僕は人から何を言われても絶対に育休を取ると決めていたので葛藤は少なかったですね。「人生100年時代」といわれますが、そのうち60年くらい働くのに対して、父として、子どもと過ごせる時間はとても短い。その中で、家庭を優先してもいい期間があるんじゃないかと考えていました。

川島:僕も計算しましたよ、子どもと過ごせる時間。意外と短くて驚きました。

永石:最近見たCM動画で父親が子どもと一緒にいられる期間は短いことに気づき、はっとしました。特に小さい頃の子どもの成長は早いので、その変化をしっかり受け止められる期間は本当に短いですよね。仕事にも今しかできないことはあるだろうけど、自分がしっかり働こうと思えば次の波がいつか来ると思います。でも「この子のこの時間は、この一回だけなんだ」と考えたら、優先したいと思うようになりました。

―ご自身のキャリアとの葛藤や、それを乗り越えたきっかけがあれば教えてください。

永石:人生における仕事とプライベートの「波」を作ることは意識しました。70歳まで働くのであれば、仕事の波を後ろの方に作ればいいだけじゃないかと。もちろん葛藤もありましたが、焦って生きるよりも目の前にある貴重な経験をしっかり享受したいと思っています。その一方で、長期的に見れば自分が育休を取ったことは大きな価値になるとも考えていて。短期的に見れば仕事の成果は上がらないかもしれないけど、これから部下や後輩が増えていく中で、その経験の差によって見えるものも語れるものも変わりますよね。

川島:僕もキャリアのことは考えましたが、一人目の時に育休を取らなかった経験から「家族を大切にしたい」という思いが強くなりました。会社に依存するのではなく、自分にできることを精一杯やっていけば、また面白い仕事ができるはず。そうやって気楽に考えるようになってから、キャリアのことはあまり気にならなくなりました。

育休で得た「仕事と家庭へのプライド」と「メタ認知」

―育休を取得する前と後で、仕事や家庭に変化はありましたか?

永石:仕事だけでなく、家庭にもプライドを持てるようになりました。育休で得た経験が仕事をするうえでの気迫にもつながったと感じています。それと、家庭を持って「永石家を守る構成員としての自分」という俯瞰的な視点を得たことも大きかったですね。物事を動かす時は自分視点ではなく、第三者視点から見ることが重要だと思っていて。自分の感情よりも「全体の成果を最大化するためにどう動くか」を自然に考えられるようになったことは、仕事上でもすごく役に立っています。

川島:僕は自分の感情や体に対して、客観的に向き合えるようになりました。育児をしていると、「眠れない」とか「イライラする」とか、逃げられない感情に向き合う場面が多いですよね。そういう時に「自分はこういうことにイライラするんだな」と気付くこともあって。それからは、できないことはできないし、しんどい時はしんどいって素直にさらけ出せるようになりました。その考え方は仕事にも影響していて、昔はなかなか人に頼れなかったのが、今では自分よりも得意な後輩に「できないから助けて」と言えるようになったんです。

永石:すごく分かります。子どもと向き合っていると分からないことばかりなので、自然と自分の感情にフォーカスするようになって、結果的にメタ認知能力が上がるというか。

川島:仕事上の対人関係にも活きますよね。クライアントでも営業でも対同僚でも、「困っていそうだな」とか「分かりました!って言ってたけど、分かってないな」とか(笑)。そういうことに気付けるようになったのも、アンテナの感度が良くなったからだと思います。

石田:僕も仕事と育児は近い存在だと思っています。視点の話でいうと、育休前は狭い範囲でしか育児というものを捉えていなかったのが、実際にやってみて初めて全体像が見えるようになりました。家庭の時間を作り出すために仕事を調整するのか、あるいは他のプライベートを調整するのかなど、全体から考えられるようになったのが大きな変化です。あとは妻とのコミュニケーションも大事にしています。あえて「定期オフサイトミーティング」と名付けて(笑)、育児についてきちんと議論する場も設けました。そうすることで、妻の考えを理解できるようになったり、自分も妻と平等に子育てをしているからこそ今まで言えなかった弱音を吐けるようになって心が軽くなりましたね。

―本日はそれぞれの育休取得エピソードをお話しいただきありがとうございました。

三者三様のエピソードでありながら、それぞれに子どもと過ごせる時間を大切にし、仕事と家庭、そして人生すべてに誇りを持って向き合っている姿が印象的でした。 仕事の経験が育児に、さらに育児の経験が仕事に活かせるという視点は、これから育休取得を考えている方の背中を押してくれるのではないでしょうか。

Prev:2022年度アンケートレポート公開
リクルート社内講演「データから見る“休み”の効用」:Next