富士通株式会社 Partner’s Interview vol.2

富士通株式会社 サステナビリティ推進本部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室 石原様、上村様、遠藤様(取材日:2021年11月8日)

D&I推進の土台は企業文化の醸成。会社と個人への働きかけを両輪で走らせる

女性活躍に始まり、サステナビリティを主軸として幅広いD&I推進に取り組む富士通株式会社。社員一人ひとりへの支援だけでなく、その土台となる会社全体の企業文化づくりも積極的に行っています。今回は、富士通におけるD&I推進の取り組みや、実際に保活総研のレクチャーを受けたご感想などを伺いました。

―D&I組織を立ち上げた経緯について教えてください。 

上村様(以下、敬称略) 2008年に現在のダイバーシティ&インクルージョン推進室(以下、D&I推進室)の前身であるダイバーシティ推進室を立ち上げました。当時はすでに多くの企業がD&I推進につながる組織活動を始めていて、富士通としても専任組織が必要ではないかと議論になりました。もともとは社長直属の独立組織でしたが、2021年4月からはサステナビリティ推進本部の管轄に入っています。女性活躍や両立支援にフォーカスしている企業も多い中、私たちはジェンダーに閉じず「そもそもダイバーシティとは何なのか?」という視点から、障がい者支援や外国籍の社員のサポートも含めた幅広い領域をカバーしています。

幅広い領域に携わる中で、特に力を入れていることは?

上村 社員一人ひとりを対象にした施策と、会社全体にかかわる施策を両輪として実施しています。女性活躍など個々の属性にフォーカスした取り組みや啓発につながる情報提供をひと通り展開し、今は一周回って原点に返ってきたような感覚を持っています。2008年の立ち上げ当初に比べると、D&Iという言葉自体はかなり浸透してきたと思います。その一方で、本当に社員一人ひとりが自分事として捉えられているか?と問われると、多くの人にとってはまだ腹落ちしていないのが現状でしょう。ここから一つ上の段階、つまりダイバーシティを前提としたインクルージョンされた組織になるためには、個々へのアプローチだけでなく土台となる企業文化の醸成が重要だと考えています。

会社全体と個々への働きかけで、アプローチの仕方に違いはありますか?

上村 会社全体への働きかけは全社員が対象ですが、個々への働きかけはどうしても対象者を絞らざるを得ません。また、個々の施策は成果が目に見えやすい一方で、企業文化づくりはすぐに結果が出るものではないため、中長期的な視野で取り組む必要があります。両者は地続きの存在だと考えていますが、そういった時間軸の違いはありますね。

実際に施策に取り組む中で、見えてきた課題があれば教えてください。

上村 グローバルな視点を意識したとき、特に女性活躍に関しては、欧米と比べて日本が遅れている感覚は否めません。そもそも社会的・文化的な背景や法制度などが全く違うため、どのように日本に落とし込んで施策を進めていくかという難しさもあります。また、一般的に日本では新入社員から役員クラスまでの各階層にわたる女性の人材が潤沢とは言えず、女性管理職比率も低いのが現状です。そういった表層的な多様性はもとより、さらに深層の多様性をどう活かしていくかという枠組みも十分に確立されていないことが根本的な課題だと感じています。

取り組みの成果を感じている点はありますか?

石原様(以下、敬称略) KPIとして設定している女性管理職比率はこの10年で約2.5倍に増加しており、一定の成果は感じています。女性社員の育成を10年続けてきた中で分かったのは、当事者だけに施策を講じても意味がないということです。管理職に就いた女性たちが本当に活躍していけるかどうかは、周囲によって大きく左右されます。そのため、さらに上の管理職が、女性活躍をどう捉えるか、仕事と子育てを両立している人たちがどういう状況なのかなどを理解するためのセッションなどを行ってきました。その中で少しずつ理解が広まった結果、徐々に比率が上がってきたのだと思います。とはいえ、社会全体から見ればまだまだ足りないと感じているので、今後はさらに加速させていきたいです。

保活総研で生まれた他社とのつながりを活かして連携していきたい

―保活総研にご参画いただいた経緯をお聞かせください。

遠藤様(以下、敬称略) これまでも仕事と子育ての両立支援を通じて、復職後の社員を対象としたセミナーを行っていたのですが、その中で「産・育休取得前にもセミナーをやってほしい」という声が非常に多くありました。そこで産・育休取得前の社員に対してもセミナーをやろうという話が持ち上がっていた時に、ちょうど保活総研のお話を伺ったのがきっかけです。

―導入の際に苦労した点はありますか?

遠藤 苦労というほどではありませんが、産・育休取得前だと保活の仕組みや進め方を知らない方も多いので、まずは保活の重要性を伝えるところから始めました。特に第一子を妊娠したばかりの方は制度面や手続きの確認、仕事の調整などで手一杯になりがちなので先々の保育園のことまで意識するのは難しいかもしれないためです。

実際に保活総研のレクチャーを受けたご感想を教えてください。 

遠藤 最初にお話を伺った時から今でも「本当に無料でいいの?」と思っています。それくらい綿密に情報がまとまっているのと、さらに家庭内で相談する際の重要なポイントの記載があったり、妊娠中・出産後の気持ちの面まで寄り添って支援されている内容が盛り込まれているのが印象的でした。

―今後、保活支援は御社の中でどのように発展しそうですか? 

石原 今は保活の相談窓口がなく、個々の上司や各部門の人事に相談している状態なので、まずはその受け皿になるものを検討していきたいと思っています。最近では社内専用のSNSで育児の情報を交換するコミュニティもできつつあります。そことうまく連携して、会社側から一方的に情報提供するだけでなく、社員同士がお互いに助け合えるような環境と保活支援をつなげていきたいと思っています。

―社内SNSでそのような場が出来たきっかけは何だったのでしょうか?

上村 もともと社員がさまざまなページを立ち上げて意見をやり取りする文化があり、育児に関する情報交換の場も、何百というコミュニティがある中の一つでした。最近では役員が書き込むこともあり、若い社員から経営層までが集う場がやっと整ってきたという状況です。日本企業は組織にしても個々の社員にしても、自ら発信してつながるというアクションが苦手だと思いますが、今の混沌とした時代にはそういった素養も求められるでしょうね。会社としても育児に限らず、一人ひとりの社員が声をあげることを奨励しています。

―最後に、今後の保活総研に期待することはありますか?

遠藤 以前セミナーに参加した他社の方と個別にやり取りする機会があり、保活に関する情報提供だけでなく、横のつながりができるのが非常にありがたいと思いました。特にセミナーでの質疑応答は他社のリアルな声を聞ける場になっていて、「うちも同じだ」と共感することも多く、また、世の中のトレンドをキャッチできる場にもなっていると思います。今後はそういった横のつながりを活かして連携したり、みんなで考えた意見を提言するなど、日本の企業全体に影響を与えるようなことができたらいいなと思っています。

―本日は貴重なお話、ありがとうございました


女性活躍に始まり、全従業員に向けた幅広いD&I推進を展開する富士通株式会社。社員一人ひとりへの支援と、その土台となる企業文化づくりに取り組み、グローバルな視点を意識しながら先を見据えたD&I推進を行っています。保活総研を通じて生まれた企業同士のつながりを活かし、さらにD&I推進の輪が広がっていくことを願っております。

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