『保活のミカタ』誕生ヒストリー~今できることから始める社会課題への挑戦~

「保育園が決まらない……」

保育施設への入所申請をしているのに入所できない「待機児童」は、首都圏を中心に1万人以上。東京都ではおよそ3人に1人が希望通りの保育園に入れない現実があります。
働く意欲があるにもかかわらず、従業員が保育園が決まらない理由で職場に復帰できない――これは本人のキャリアにとっても、雇用する企業側にとっても大きな損失とも言えます。

リクルートグループにおいても、従業員の「保活」(=保育園に入園するための活動)の支援を重要課題と捉え、2018年より課題解決への取り組みを本格化させました。そして現在、入園決定率は98.7%(2020年4月入園結果)へ向上しています。

取り組みをさらに広げていくにあたり、リクルートの保活支援施策のこれまでの歩みをお伝えします。

「復職できない」「キャリアを諦めざるをえない」従業員をなくしたい

リクルートグループでは、子どもを持つ従業員が年々増加していました。また、首都圏を中心に産・育休を取得した従業員の3人に1人が、保育園に入れず育休を1年以上に延長しなければならない状況にありました。

その課題に対して、従業員の復職支援、そのなかでも保活支援を実施しようと立ち上がったのが、人事部門に所属する酒田絵美(さかた・えみ)、東雅子(ひがし・まさこ)の2名でした。2人は人事担当として、育休中・育児中の従業員やその上司から相談を受けることが年々増えていました。

育児中の従業員からは、このような悲痛の声が聞こえてきていました。

「保育園に入園を申し込んだら、定員11人のところ241番目でした」

「兄弟が別々の保育園に通うことになってしまいました。2つの保育園に片道40分かけて送り迎えしなければなりません」

「認可保育園に入れず、認可外保育園に入園することになりました。保育料は毎月13万5000円。負担が重いです」

また、子どもを預ける先が見つからず、路頭に迷う従業員もいました。

早急にこの問題を解決しなければならない。保活の当事者でもあった酒田と東の2人は、同じように育休の期限が迫り不安と焦りを抱いた経験がありました。当事者に近い立場から、なんとか保活に悩む従業員の助けになりたいという想いで取り組みを開始しました。

保活の「2大ハードル」を越える

保活の難しさがどこにあるか。それは「入園の仕組み」と「情報収集」です。

保育園には大きく分けて「認可保育園」と「認可外保育園」が存在します。申し込む際には、「認可保育園」は住まいのある自治体へ、「認可外保育園」は各保育園へと、窓口が異なります。

多くの方が入園を希望する傾向が見られるのが「認可保育園」。認可保育園への入園は、各世帯の「点数」によって合格・不合格が決まります。この点数は「調整指数」と呼ばれます。
親たちは入園のために、1点・2点のせめぎ合いをすることになります。しかし、点数の算出は簡単にはいきません。自身の持ち点がよくわからず、点数アップの方法も複雑でわからない。また、自治体によって保育園入園に関するルールは異なります。

さらに、認可保育園入園の詳細なルールが記されているのは、基本的に紙の資料。つまり、現在は、詳細情報を簡単にネット検索だけで得ることも難しいのです。だから、仕組みを把握するだけでなく、情報収集においてもハードルが高いというわけです。

「従業員が、子どもを保育園に入園させるために何をすればいいかわかるようにする」。それをミッションとした私たちは、保活相談専用窓口『保活のコンシェルジュ(現:保活のミカタ)』を立ち上げました。

最初に行ったのは、従業員に保活面談をするにあたっての保活戦略の構造化でした。

  • 基礎知識
  • 入園ルール
  • 家庭の優先度

この3つの要素にもとづき、一人ひとり違う状況に対し、一人ひとりに合った「最適な保活戦略」を導き出すことを目指しました。

3つの要素の中でも、「入園ルール」の理解は時間がかかるけれどとても大切なこと。そこで私たちは、各自治体が発行している入園案内の資料をすべて読むことにしました。
1冊約100ページの入園案内25自治体分を2人で読み込み、保育園入園にまつわる複雑な条件・ルールを自治体ごとに整理。ポイントを5分で理解できるようにし、保活戦略を決めるにあたっての着眼点や具体的保活に向けたアドバイスをまとめた冊子『保活のコツBOOK』を作りました。

冊子を渡して終わり、ではありません。私たちがなにより大事にしているのは、作成した『保活のコツBOOK』等を一緒に見ながら、目の前の一人ひとりを全力でサポートすることです。そのために設けた専用の相談窓口では、一人ひとりに向き合い、相談に応えます。

その結果、面談で聞いた内容をもとにデータベースに情報を集約したことにより、居住地域・勤務地・出産時期・復職希望時期・家庭状況などに合わせ、さらに具体的な「保活戦略」を提案できるようになりました。

2018年8月から現在まで、男女問わず150名以上の従業員の相談に対応。保活コンシェルジュが面談した従業員のうち、95%以上が保活を成功させ、入園に至っています。

社会課題に挑戦し、理想の「未来」を実現したい

いち当事者だった私たちが、復職支援の仕組み作りに向けてアクションを起こした背景には、「“子どもの幸せ”も“親の働く”も両立できる世界にしたい」という大きな理想があります。

世の中のさまざまなサービスは、作る側と使う側、双方から進化が起きていると言われています。
自社内での保活支援への挑戦は、「保育園入園問題」という社会課題への挑戦でもありました。

まずは、リクルートグループの従業員のために取り組みを始め、一定の成果を挙げることができましたが、これはほんの一歩でしかありません。
アクションを起こす中で見えてきた「次」の一歩。それは、「誰もが、希望時期に保育園に入れる」という未来のアタリマエを考え、構築していくことです。

同じ想いを抱く企業の皆様と連携し、ライフステージが変化しても希望通りの働き方ができるという「未来のアタリマエ」をつくっていきたいと思います。

 

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